Japanische Klassiker mit Furigana
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そのとし
その年
宮本 百合子
Lesen Sie その年 (そのとし) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.964 Zeichen · 28 Bildschirme
故郷を思えば、それにつれて母親のことを思うしかないような若者たち。勿論、お茂登にしろ、息子の生活に息子だけしか知らないものがあろうとはおぼろ気ながら察していた。例えば、源一に面会に行った晩、帰りのバスを源一は何故はずしたのであったろう。広治は、兄が公用証を持っていると話していた。それがあるなら出られないわけはなかった。何かの曰くがあったのだ。あの時のことは忘られず、屡々お茂登の記憶に浮んだが、まかれたとしてそれに腹が立つより、そんなにして自分をまいたりした日頃やさしい源一の出発前の心根が、哀れに思われるのであった。
還ると思えばこそ、待つことだけを心において、いない間の淋しさにかかずらってもおられた。二度と息子の生きている姿を或は見ることが出来ないかも知れないのだと思うと、お茂登の心は、昔々源一たちが小さくて自分が襟をあけては乳をくくめてやっていた時分、その乳が張って痛んで来たように切なくいとしく痛んで来て、何とかして、生きていられる今の日々のうちに、息子たちをよろこばしてやりたい。その思いで、喉もつまるほどせき上げられるのであった。
何処となし外に向って何かをさがしているようであったお茂登の眼色に、内に向う濃いしおりが現れた。