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Japanische Klassiker mit Furigana

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そのきどをとおって

その木戸を通って

山本 周五郎

Lesen Sie その木戸を通って (そのきどをとおって) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.448 Zeichen · 44 Bildschirme

Aozora Bunko

「しかし思いだすときが来るんだ」と彼はやさしく云った、「おまえは覚えていないだろうが、まえにもいちどこんなことがあった、きっとまたいつか同じようなことがあるだろう、それならいっそ早いほうがいいじゃないか、さあ、眼をつむってごらん」

ふさは眼をつむった。

「いまおまえは、――」と彼は声をひそめて、ごくゆっくりと囁いた、「笹の道を歩いて来た、庭を歩いて来たのだろう、ここが笹の道だ、そして向うに木戸がある」

ふさは眼をつむったまま、ひっそりと息をころしていた。

「笹の道をとおって、木戸へ来た」と彼は静かに続けた、「その木戸を出るんだ、さあ、木戸の外はどうなっているか」

正四郎は呼吸を詰めて待った。ふさは黙って立っていたが、やがてかぶりを振った。

「なにもわかりません」眼をあきながらふさは云った、「いま仰しゃったことは、わたくしが云ったのでしょうか」

「おまえが云ったのだ」

ふさはまたかぶりを振った、「わたくしにはなにも思いだせません、そんなことを云ったことさえ覚えがございません」

「気分が悪くはないか」

「いいえ」

「それならいい」と彼は妻の肩を撫でた、「もう少し二人で月を見よう、そこに銚子が落ちているよ」