Japanische Klassiker mit Furigana
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『てっぽうさへいじ』ついでにもひとつ
たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集【底本画像有】
佐藤 春夫
Lesen Sie たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集【底本画像有】 (『てっぽうさへいじ』ついでにもひとつ) von 佐藤 春夫 (さとうはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.182 Zeichen · 48 Bildschirme
わたくしが再び受話器を取り上げると、今のさっきと同じ声が、
「お前さん、目白坂の佐藤かい?」
と先方の云う事は今のさっきとまるで同じ事である。こちらの答えるのも今のさっきと同じよりほかに云い方もない。嘘はどのようにでも云えるだろうが、真実は同じ云い方しかできないからである。
厄介な話だなと受話器を手から掛け放したと思うとたんに、またしてもベルが鳴りひびいて同じく三度目の同じ電話である。こうして同じ電話が、三度、四度、五度、六度。こちらでも三度、四度、五度、六度、同じ電話を繰り返した。
いくら突っぱねても、何度でもこりずにまたかかって来る。その度を増す毎に、先方は言葉も語調も益々ぞんざいに荒々しくなってくるばかりで、話の内容は最初のとおり依然として変りはない。
わたくしは考えはじめた。まさかいたずらでもあるまい。それよりもヒョッとすると気違だなと思いはじめた。
その執拗さにほとほと手を焼いたわたくしは、或は気狂いか犯罪者としか思えないような、こんな電話の取次を交換局に対して中止するように懇願する方法は無いものであろうか。せめては先方はどこの何人がかけているのかだけでも知ることができないものであろうか。