Japanische Klassiker mit Furigana
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きつねつき
ちくま日本文学012 中島敦
Lesen Sie ちくま日本文学012 中島敦 (きつねつき) von Nakajima Atsushi (中島 敦) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.136 Zeichen · 19 Bildschirme
ある時は、トオラス山の隼が、湖と草原と山脈と、またその向うの鏡のごとき湖との雄大な眺望について語った。草原の牝狼が、白けた冬の月の下で飢に悩みながら一晩中凍てた土の上を歩き廻る辛さを語ることもある。
人々は珍しがってシャクの譫言を聞きに来た。おかしいのは、シャクの方でも(あるいは、シャクに宿る霊共の方でも)多くの聞き手を期待するようになったことである。シャクの聴衆は次第にふえて行ったが、ある時彼等の一人がこんなことを言った。シャクの言葉は、憑きものがしゃべっているのではないぞ、あれはシャクが考えてしゃべっているのではないかと。
なるほど、そう言えば、普通憑きもののした人間は、もっと恍惚とした忘我の状態でしゃべるものである。シャクの態度には余り狂気じみた所がないし、その話は条理が立ち過ぎている。少し変だぞ、という者がふえて来た。
シャク自身にしても、自分の近頃している事柄の意味を知ってはいない。もちろん、普通のいわゆる憑きものと違うらしいことは、シャクも気がついている。しかし、なぜ自分はこんな奇妙な仕草を幾月にも亘って続けて、なお、倦まないのか、自分でも解らぬ故、やはりこれは一種の憑きもののせいと考えていいのではないかと思っている。