Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅんきんしょう
ちくま日本文学014 谷崎潤一郎
谷崎 潤一郎
Lesen Sie ちくま日本文学014 谷崎潤一郎 (しゅんきんしょう) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.196 Zeichen · 169 Bildschirme
つまり義経の落ちて来た道と云うのが普通の順路じゃなかったのかね。だから竹田出雲なんぞきっとここへやって来て、初音の鼓を見たことがあるんだよ」
―――津村はその岩の上に腰をおろして、いまだに初音の鼓のことをなぜか気にかけているのである。自分は忠信狐ではないが、初音の鼓を慕う心は狐にも勝るくらいだ、自分は何だか、あの鼓を見ると自分の親に遇ったような思いがする、と、津村はそんなことを云い出すのであった。
ここで私は、この津村と云う青年の人となりをあらまし読者に知って置いて貰わねばならない。実を云うと、私もその時その岩の上で打ち明け話を聞かされるまで委しいことは知らなかった。―――と云うのは、前にもちょっと述べたように、彼と私とは東京の一高時代の同窓で、当時は親しい間柄であったが、一高から大学へ這入る時に、家事上の都合と云うことで彼は大阪の生家へ帰り、それきり学業を廃してしまった。その頃私が聞いたのでは、津村の家は島の内の旧家で、代々質屋を営み、彼の外に女のきょうだいが二人あるが、両親は早く歿して、子供たちは主に祖母の手で育てられた。そして姉娘はつとに他家へ縁づき、今度妹も嫁入り先がきまったについて、祖母も追い追い心細くなり、忰を側へ呼びたくなったのと、家の方の面倒を見る者がないのとで、急に学校を止めることにした。