Japanische Klassiker mit Furigana
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とむらいきかんしゃ
とむらい機関車
大阪 圭吉
Lesen Sie とむらい機関車 (とむらいきかんしゃ) von 大阪 圭吉 (おおさかけいきち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 186.729 Zeichen · 371 Bildschirme
とおびえるように屋内を見廻していたが、直ぐに立上った女の視線にぶつかると、こっそり眼配でもするように頤をしゃくって、そのまま外の闇へ消えてしまった。
それは沈没船北海丸の砲手、死んだ筈の小森安吉だった。
二
酒場の中では、人々が総立ちになった。
「お前の、亭主じゃないか」
丸辰が、すっかり酔のさめた調子で云った。若い水夫が、顫え声で、
「人違いだろう?」
「いや、人違いじゃあねえ。わしは、この根室に出入する男の顔は、今も昔も、一人残らず知っている」丸辰は、立ちあがりながら、「あいつア、確かに北海丸の安吉だ」
「じゃア、生残っていたんか」
「助かって、今頃帰って来たんかな」
けれどもやがて女は、ものも云わずに、扉口のほうへ馳けだして行った。人々もその後から雪崩を打って押しかけた。霧の戸外へ向った扉がサッと開けられると、最初に飛出した女は、仄白くボヤけた向うの街燈の下を抜けて、倉庫の角を波止場の方へ折曲って行った男の影を見た。
「私の勝手にさしといておくれよ」
女は、雪崩出ようとする男達を振切って、そのままバタバタと影の男を追い出した。
倉庫の蔭を曲ると、乳色の海霧が、磯の香を乗せて激しく吹きつけて来た。