Japanische Klassiker mit Furigana
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みちのく
みちのく
岡本 かの子
Lesen Sie みちのく von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.136 Zeichen · 13 Bildschirme
四郎は怯えも取れて、いつものようにお蘭の側に坐ってどこかで貰って来た絵本を拡げてお蘭の説明を訊くのであった。お蘭は仕事をしながら説明をしてやる。
「これなんだね」
「鉄道馬車」
「これなんだね」
「お勤め人、洋服を着て鞄持って」
四郎はその絵姿をつくづく眺めていたが、やがて言った。
「おら、もうじき洋服を着るだよ」
お蘭は、これがただの四郎の空想だと思った。
「それはいいわね」
四郎は得意になった。
「おら唄うたって、踊りおどるだよ」
お蘭は少々訝しく思えて来た。
「どこでよ、どうしてよ」
「そして、悧巧になって、お蘭さ嫁に貰いに来るだよ」
お蘭はふと、近頃人の噂では四郎の人気につけ込んで興行師がこの白痴の少年に目をつけ出したということを思い出した。これは只事ではない。
「駄目よ、駄目よ、四郎さん。そんなことしちゃ」
けれども四郎はいつもの通りにはお蘭のいうことを聴き入れなかった。
「よっぽど悧巧にならなけりゃ、おらに、お蘭さ嫁に来めえ」
そういうと四郎はふいと立って出て行ってしまった。
洋服を着て派手な舞台に立つことと嫁を貰う資格とを無理に結びつけて誰かがこの白痴の少年の心に深々と染み込ませたものらしい。