Japanische Klassiker mit Furigana
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もののかげ
ものの影
豊島 与志雄
Lesen Sie ものの影 (もののかげ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.794 Zeichen · 18 Bildschirme
子鮒とか泥鰌とか、ろくなものはいないだろうが、大食いの懶け者には、手頃な時間つぶしだ。そして松の枝ぶりなどを眺めた。その枝ぶりが、愚かな頭の中に残っていて、首を縊ってぶら下るのに恰好だなどと、ぼんやり考えたのだろう。そして夜遅く、寝間着紐なんか懐に入れて、ふらりと出かけたんだ。自殺の決心とか覚悟とか、そんな気の利いたものがあるものか。遺書とかいうものも、きっといい加減なものだろう……。
聞いていて、おばさんは、こんどは頬笑んだ。
「島野さん、まるで、小説家みたいね。」
だが、そこに居合せた中年の止宿人は、不快そうな面持ちで、口を出した。
「然し、問題は、そんなことではなく、自殺か他殺かという点にあるんでしょう。」
彦一は強い視線を相手に向けた。
「勿論、他殺でしょう。彼は死神にとっ憑かれたように、ぼんやりつっ立ってたんですよ。覚悟したわけでもなく、ただなんとなく死ぬ気でいる。いや、もう死んでたと言ってもいい。はっきりした自意識もなく、ただ、死ぬ気持ち……死気とでも言ったらいいでしょうか、その、死気に包まれて、暗がりにつっ立っていたんです。これは、不気味だとばかりは言えますまい。