Japanische Klassiker mit Furigana
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ようかづきのばん
ようか月の晩
宮本 百合子
Lesen Sie ようか月の晩 (ようかづきのばん) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.070 Zeichen · 7 Bildschirme
一本針の婆さんの処では、滅多によその人の声がしませんでした。けれども、目の覚めるような色の布と糸とで、燈光をつけないでも夜部屋の隅々がぽうと明るい程でした。
赤鼻の、大眼鏡の、青頭巾の婆さんは、朝から晩までその裡で繍をしているのです。
ところが或る時のこと、町じゅうの人を喫驚させることが起りました。それはほかでもない、春の朗かな或る朝、人々が朝の挨拶を交しながら元気よく表の戸や窓を開けていると、遙か向うの山の城の方から、白馬に騎り、緋の旗を翻した一隊の人々が町に入って来、家もあろうに、一本針の婆さんの処へ止ったというのです。
頭に鳥毛飾りの帽子をかぶり、錦のマンテルを着た人は、王様の使者でなくて誰でしょう。
風邪をひいた七面鳥のような蒼い顔になったお婆さんに、使者は恭々しく礼をして云いました。
「お婆さん、ちっとも驚くことはありません。私共は王様の姫君からよこされた使です。今度王女様が隣りの国の王子と御婚礼遊ばすについて、どうか、朝着る着物を、貴女に繍って貰いたいとおっしゃいます。夜のお召は、宝石という宝石を鏤めて降誕祭の晩のように立派に出来ました。