Japanische Klassiker mit Furigana
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わがまま
わがまま
伊藤 野枝
Lesen Sie わがまま von 伊藤 野枝 (いとうのえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.570 Zeichen · 18 Bildschirme
そしてまき子のたっている反対の方をむいて葉書を顔で覆うようにして男の居所と名前を手早く書きつけて裏返した。何を書こう? 何にも書けない。彼女の目からは熱い涙が溢れ出た。
「ようやくここまで着きました――」書いていくうちに眼鏡が曇って見えなくなった。書けない。早く書いてしまおうとしてイライラして後をふり返るとたんに、
「改札はじめてよ早く行きましょう」と急かれる。後の五六字はほとんど無意識に書いた。
汽車に乗ってからも動き出してからも登志子は右側の窓の処に坐って外の方をむいたっきりに固くなっていた。汽車が走り始めてからは彼女は何を考えることも出来なかった。頭はほとんど働きを止めてしまった。固くなってしまったような、からっぽなような登志子自身すらどうなのか分らなくなってしまった。
安子は登志子のもった雑誌を解りもしない癖に広げて退屈しのぎに読んでいる。まき子はただもう四五年ぶりにでも吾家に帰っていく子供のように燥いでいるのだ。登志子は時々その声を聞いては、自分とまき子をくらべてみた。
まき子は登志子よりは二つ年上の二十歳だ。それでも父に甘やかされてわがままに育った彼女は、一人前の女として物を考えてみることなんかまるでなかった。