Japanische Klassiker mit Furigana
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わがははをおもう
わが母をおもう
宮本 百合子
Lesen Sie わが母をおもう (わがははをおもう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.398 Zeichen · 7 Bildschirme
実業家がだんだん世間の注目の的となり、小説でも「金色夜叉」などがひろく読まれた時代でしたから、母の縁談というものも、やはり当時の社会相を反映していたらしい。伯父に当る人がある日母の部屋へ来て「よっちゃん! この伯父さんが一生恩にきるから某大将のところへお嫁に行っておくれでないか、そうすれば伯父さんは年に何万と利益があるし、お父さまは大臣になれる……」と言ったことがあったそうです。
そういう周囲と戦って、母は貧乏な工学士である父中條精一郎のところへかたづいて来たわけでした。父との結婚も母としては、若い娘らしいさまざまの空想に動かされたと言うより、極めて現実的な観察から承知したらしいのです。母は二人娘のあった長女で、父親っ子でしたが次女は母親っ子で、昔の家庭ですからお姑も居り、その人も「よっちゃん、よっちゃん」と可愛がるというありさまで、母は母親からは愛されていなかった。従って母に与えられる縁談は、先ほどのいかがわしい取引めいたものか、さもなければ父との縁談のような、一向ぱっとしないものであるか、どちらかであったらしい。
母は役人生活の内情や、実業家と言われる人の家庭生活を――派手に暮した伯父の生活の観察からいろいろ批判していたらしく、結局技術だけで食うには困らずにやってゆけるという程度の父のところへ来ること