Japanische Klassiker mit Furigana
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わがちち
わが父
宮本 百合子
Lesen Sie わが父 (わがちち) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.314 Zeichen · 19 Bildschirme
活気のある無頓着さで、父は晩年になっても身なりなどちぐはぐの儘でいた。私や妹等がお父様折角この服を着たのならネクタイはああいう色だといいのに、と云ったりした。お前たちは、さすが俺の子だね。なかなか趣味がいい。そう云って大層御機嫌であるがネクタイの方は大抵そのままであった。忘れた時分に、百合子、お前三十五銭のネクタイというのを知っているかい、などと云って得意であった。
父は腕時計をつかわず、プラチナの鎖つきの時計をもって歩いていたが、胴の方はクロームであった。最後に、箱根から慶応病院まで父の体について行った時計も恐らくはそれだったのではないかしら。この胴がクロームという時計については、忘られない話がある。余程古いことになるが或る時、林町へ遊びに行った私に、父がふっと、
「お前、俺の折りたたみナイフを持ってって使っているかい」
と訊ねた。父が初めてイギリスへ行った時買って来たもので、七つ道具が附属した便利な品であった。
「ああ、つかっていてよ」
「――時計も持ってったかい?」
一寸声をおとすようにして、私にだけ聴えるように父はそれを云った。
「時計って――」