Japanische Klassiker mit Furigana
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わがまち
わが町
織田 作之助
Lesen Sie わが町 (わがまち) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 93.840 Zeichen · 186 Bildschirme
鶴富組の主人は腕利きの潜水夫が無くて弱っていたところだったので、次郎と君枝が現場へ現われると、
「よく気が変ってくれたもんだね」
と、喜んだ。次郎は、
「人間はたまに怪我もして見んならんもんですよ」
と、笑って、五十尋の深海へ潜った。
君枝がホースを持っているのだと思えば、次郎はもうどんな危険もいとわぬ気がして、そして、マニラで死んだという君枝の父親の気持が、ふっと波のように潜水服に当って来るのだった。
こうして潜っている間にも、祖父さんはよちよち俥を走らせているのだと、静脈の痛々しく盛り上った他吉の手足が泛び、次郎は、自分ももし、君枝の父親と同じように、祖父さんからマニラへ行けといわれたら、もう断り切れぬだろうと思った。
沈船作業が済んで、大阪へ帰って来ると、間もなくその年も慌しく押し詰り、大東亜戦争がはじまった。
そして、皇軍が比律賓のリンガエン湾附近に上陸した――と、新聞は読めなかったが、ラジオのニュースは他吉の耳にもはいった。
「ああ、今まで生きてた甲斐があったわい。孫も立派にやってる。曾孫も丈夫に育ってる、もう想い残すことはない。わいの死骸はマニラの婿といっしょの墓にはいるネや」