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Japanische Klassiker mit Furigana

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オペラのつじ

オペラの辻

岡本 かの子

Lesen Sie オペラの辻 (オペラのつじ) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.858 Zeichen · 8 Bildschirme

Aozora Bunko

夏の夜だった。

「ベルリンから来年の春日本へかえるんだけれど太郎さんはやっぱり残る?」

「おや、またその事?」

子どもは一寸うるさそうにいったが、やがて顔を真赤にしてどもり乍ら云った。

「僕、親に別れるのはつらいけど……でも巴里からは絶対に離れ度く無い!」

わっと私は声を立てて泣いて仕舞った。涙にむせび乍ら私は自分だけに聞えるくらい小さな声で叫んだ。「この小鬼奴! 小鬼奴! 小鬼奴!」

×       ×

ドイツで冷静に勉強していた期間に私は決めた。どうせ親の情痴を離れ得ぬとしても今までの情痴を次の情痴に置き換えよう。子がたとえ鬼の娘を妻にして呉れとせがんでも断われないだろう私なのだ。巴里と云う子の恋人の許へ置いて行くよりほかはあるまいものを。世人よ。十年二十年巴里に子を置き違い画かきにするなぞいう野心の親とは私は違う。幸い私が方向を換えた芸術の形式が私に今までの歌より多くの収入を与えるなら、私はみんな子への情痴の世界にそれをつぎ入れよう。巴里と云う恋人と同棲する子にお金の不自由をさせ度く無い。

×       ×

今年の始め巴里の停車場で最後に子と別れた私と子の父親は汽車の中で人目も恥じず折重なって泣いた。