Japanische Klassiker mit Furigana
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オンチ
オンチ
夢野 久作
Lesen Sie オンチ von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.673 Zeichen · 42 Bildschirme
その瘠せた細面にかけた金縁の眼鏡に火の海が反射して小さな閃光を放っている。
その背後にモウ一人、職工姿の戸塚が、影法師のように重なり合って突立っている。鳥打帽を冠って、眼鏡をかけているところまで中野学士とソックリである。それが中野学士の背後から覗き込むようにして、何かヒソヒソ囁やいている様子であったが、やがて返事を催促するかのように中野学士の肩に両手をかけてゆすぶった。
「返事はどうですか……中野さん……」
「……………」
「ここで返事すると云ったじゃありませんか……ええ……」
「……………」
「貴方は今夜は現場勤務じゃないでしょう。出勤簿には欠勤の処に印を捺しておられるでしょう」
中野学士が微かにうなずいた。それから悠々と金口煙草を一本出してライターを灯けた。
「……あっしを……それじゃ……オビキ出すために、あんな事を云ったんですか……ここまで……」
戸塚は脅びえたように足の下の火の海を見た。中野学士がそう云う戸塚の顔を振返って冷然と笑った。白い歯並が暗に光った。
「暑いじゃないですかここは……丸で蒸されるようだ」
「……フフン……百二三十度ぐらいだろうな……この空気は……フフン……」