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Japanische Klassiker mit Furigana

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オンチ

オンチ

夢野 久作

Lesen Sie オンチ von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.673 Zeichen · 42 Bildschirme

Aozora Bunko

「何だ何だ」という声がデッキの上の闇から聞こえて、ガタガタと二三人走って来る足音がした。

しかし中野学士の耳には這入らないらしかった。火焔と同じくらいの熱度を保った空気に迫られて動くまいとしても動かずにいられなかったのであろう。死物狂いに手足を振り動かして火の海に背中を向けようとした。

「ギャアギャアギャア……ギャギャギャギャッ……」

と人間離れのした声を立てた。その背中を掴んでいる又野も、絶体絶命の赤鬼みたような表情に変った。自分の踵がポリポリポリと砕けて脱け落ちそうな苦しみの中に、息も絶え絶えになって喘いだ。

「ハッハッハッハッ……あばれちゃ……いかん……ハッハッハッハッ……動いちゃ……」

折柄起った薄板工場の雑音のために、その声は掻き消されて行った。

その時に中野学士の胸のポケットからハミ出していた白いハンカチが、フワリと火の海の上に落ちてメラメラと燃え上った。トタンに中野学士が人間の力とは思われぬ力と声を出した。

「……グワ――アアッ……」

中野学士のお尻の処の布地が、又野の指の間で破れて、片足が足首の処まで火の海の中へ落ち込んだのであった。同時に硫黄臭い水蒸気と、キナ臭い煙を多量に交えた焔が燃え上って、又野の顔から胸の処まで包んだ。