Japanische Klassiker mit Furigana
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オンチ
オンチ
夢野 久作
Lesen Sie オンチ von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.673 Zeichen · 42 Bildschirme
死骸の顔を正視しつつ軍人のように上半身を傾けて敬礼した。何事か祈るように両眼を閉じると熱い涙をポタポタとコートの赤土の上に落した。
「……すまん……済みまっシェン……」
遥か向うを通る四五人の職工が、鉄片の堆積越しにこちらを見て、ゲラゲラと笑いながら事務室の中へ這入って行った。やはり芝居の稽古と思ったのであろう。
その間に死骸の顔の血を、自分の西洋手拭で拭いてやっていた戸塚は、突然に大きな声で叫んだ。
「……ウワアッ……西村さんだっ……」
「ナニ。何だって……」
とほかの二人……又野と三好が顔を近寄せて来た。スチームの音で聞こえなかったらしい。
「事務所の西村さんだよ。俸給係の……」
「何だ……俸給がどうかしたんか」
「馬鹿ッ。この顔を見ろッ。俸給係の西村さんだぞッ。俺達の俸給が持ってかれたんだッ」
と早口に叫んだ戸塚は、ほかの二人が呆気に取られているうちに素早く、直ぐ横の木工場に飛込んで行った。犯人のアトを追って行ったらしかった。
しかし戸塚は、そのまま帰って来なかった。
木工場と鋳造場と、その向うの薄板工場と、第一工場のデッキの下を潜り抜けて、購買組合の前から通用門を抜けると往来へ出る。