Japanische Klassiker mit Furigana
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カインのまつえい
カインの末裔 クララの出家
有島 武郎
Lesen Sie カインの末裔 クララの出家 (カインのまつえい) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.864 Zeichen · 93 Bildschirme
女の来ようは思いの外早い事も腹の立つほどおそい事もあった。仁右衛門はだだっ広い建物の入口の所で膝をだきながら耳をそばだてていた。
枝に残った枯葉が若芽にせきたてられて、時々かさっと地に落ちた。天鵞絨のように滑かな空気は動かないままに彼れをいたわるように押包んだ。荒くれた彼れの神経もそれを感じない訳には行かなかった。物なつかしいようななごやかな心が彼れの胸にも湧いて来た。彼れは闇の中で不思議な幻覚に陥りながら淡くほほえんだ。
足音が聞こえた。彼れの神経は一時に叢立った。しかしやがて彼れの前に立ったのはたしかに女の形ではなかった。
「誰れだ汝ゃ」
低かったけれども闇をすかして眼を据えた彼れの声は怒りに震えていた。
「お主こそ誰れだと思うたら広岡さんじゃな。何んしに今時こないな所にいるのぞい」
仁右衛門は声の主が笠井の四国猿奴だと知るとかっとなった。笠井は農場一の物識りで金持だ。それだけで癇癪の種には十分だ。彼れはいきなり笠井に飛びかかって胸倉をひっつかんだ。かーっといって出した唾を危くその面に吐きつけようとした。
この頃浮浪人が出て毎晩集会所に集って焚火なぞをするから用心が悪い、と人々がいうので神社の世話役をしていた笠井は、おどかしつけるつもりで見廻りに来たのだった。