Japanische Klassiker mit Furigana
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カインのまつえい
カインの末裔 クララの出家
有島 武郎
Lesen Sie カインの末裔 クララの出家 (カインのまつえい) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.864 Zeichen · 93 Bildschirme
「お、広岡さんええ所に帰ったぞな」
笠井が逸早く仁右衛門を見付けてこういうと、仁右衛門の妻は恐れるように怨むように訴えるように夫を見返って、黙ったまま泣き出した。仁右衛門はすぐ赤坊の所に行って見た。章魚のような大きな頭だけが彼れの赤坊らしい唯一つのものだった。たった半日の中にこうも変るかと疑われるまでにその小さな物は衰え細っていた。仁右衛門はそれを見ると腹が立つほど淋しく心許なくなった。今まで経験した事のないなつかしさ可愛さが焼くように心に逼って来た。彼れは持った事のないものを強いて押付けられたように当惑してしまった。その押付けられたものは恐ろしく重い冷たいものだった。何よりも先ず彼れは腹の力の抜けて行くような心持ちをいまいましく思ったがどうしようもなかった。
勿体ぶって笠井が護符を押いただき、それで赤坊の腹部を呪文を称えながら撫で廻わすのが唯一の力に思われた。傍にいる人たちも奇蹟の現われるのを待つように笠井のする事を見守っていた。赤坊は力のない哀れな声で泣きつづけた。仁右衛門は腸をむしられるようだった。それでも泣いている間はまだよかった。赤坊が泣きやんで大きな眼を引つらしたまま瞬きもしなくなると、仁右衛門はおぞましくも拝むような眼で笠井を見守った。