Japanische Klassiker mit Furigana
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カインのまつえい
カインの末裔 クララの出家
有島 武郎
Lesen Sie カインの末裔 クララの出家 (カインのまつえい) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.864 Zeichen · 93 Bildschirme
そして夜着をかけ添えて軽く二つ三つその上をたたいてから静かに部屋を出て行った。
クララの枕はしぼるように涙に濡れていた。
無月の春の夜は次第に更けた。町の諸門をとじる合図の鐘は二時間も前に鳴ったので、コルソに集って売買に忙がしかった村の人々の声高な騒ぎも聞こえず、軒なみの店ももう仕舞って寝しずまったらしい。女猫を慕う男猫の思い入ったような啼声が時折り聞こえる外には、クララの部屋の時計の重子が静かに下りて歯車をきしらせる音ばかりがした。山の上の春の空気はなごやかに静かに部屋に満ちて、堂母から二人が持って帰った月桂樹と花束の香を隅々まで籠めていた。
クララは取りすがるように祈りに祈った。眼をあけると間近かにアグネスの眠った顔があった。クララを姉とも親とも慕う無邪気な、素直な、天使のように浄らかなアグネス。クララがこの二、三日ややともすると眼に涙をためているのを見て、自分も一緒に涙ぐんでいたアグネス。……そのアグネスの睫毛はいつでも涙で洗ったように美しかった。殊に色白なその頬は寝入ってから健康そうに上気して、その間に形よく盛り上った小鼻は穏やかな呼吸と共に微細に震えていた。