Japanische Klassiker mit Furigana
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ひきょうもの
カインの末裔
有島 武郎
Lesen Sie カインの末裔 (ひきょうもの) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.876 Zeichen · 52 Bildschirme
物の枯れてゆく香いが空気の底に澱んで、立木の高みまではい上がっている「つたうるし」の紅葉が黒々と見えるほどに光が薄れていた。シリベシ川の川瀬の昔に揺られて、いたどりの広葉が風もないのに、かさこそと草の中に落ちた。
五、六丁線路を伝って、ちょっとした切崕を上がるとそこは農場の構えの中になっていた。まだ収穫を終わらない大豆畑すらも、枯れた株だけが立ち続いていた。斑ら生えのしたかたくなな雑草の見える場所を除いては、紫色に黒ずんで一面に地膚をさらけていた。そして一か所、作物の殻を焼く煙が重く立ち昇り、ここかしこには暗い影になって一人二人の農夫がまだ働き続けていた。彼は小作小屋の前を通るごとに、気をつけて中をのぞいて見た。何処の小屋にも灯はともされずに、鍋の下の囲炉裡火だけが、言葉どおりかすかに赤く燃えていた。そのまわりには必ず二、三人の子供が騒ぎもしないできょとんと火を見つめながら車座にうずくまっていた。そういう小屋が、草を積み重ねたように離れ離れにわびしく立っていた。
農場の事務所に達するには、およそ一丁ほどの嶮しい赤土の坂を登らなければならない。ちょうど七十二になる彼の父はそこにかかるとさすがに息切れがしたとみえて、六合目ほどで足をとどめて後をふり返った。