Japanische Klassiker mit Furigana
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ひきょうもの
カインの末裔
有島 武郎
Lesen Sie カインの末裔 (ひきょうもの) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.876 Zeichen · 52 Bildschirme
彼はそういう時には思わず知らずはらはらした。何処までも謹恪で細心な、そのくせ商売人らしい打算に疎い父の性格が、あまりに痛々しく生粋の商人の前にさらけ出されようとするのが剣呑にも気の毒にも思われた。
しかし父はその持ち前の熱心と粘り気とを武器にしてひた押しに押して行った。さすがに商魂で鍛え上げたような矢部も、こいつはまだ出くわさなかった手だぞと思うらしく、ふと行き詰まって思案顔をする瞬間もあった。
「事業の経過はだいたい得心が行きました。そこでと」
父は開墾を委託する時に矢部と取り交わした契約書を、「緊要書類」と朱書きした大きな状袋から取り出して、
「この契約書によると、成墾引継ぎのうえは全地積の三分の一をお礼としてあなたのほうに差し上げることになってるのですが……それがここに認めてある百二十七町四段歩なにがし……これだけの坪敷になるのだが、そのとおりですな」
と粗い皺のできた、短い、しかし形のいい指先で数字を指し示した。
「はいそのとおりで……」
「そうですな。ええ百二十七町四段二畝歩也です。ところがこれっぱかりの地面をあなたがこの山の中にお持ちになっていたところで万事に不便でもあろうかと……これは私だけの考えを言ってるんですが……」