Japanische Klassiker mit Furigana
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ひきょうもの
カインの末裔
有島 武郎
Lesen Sie カインの末裔 (ひきょうもの) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.876 Zeichen · 52 Bildschirme
「若い且那、今度はまあ御苦労様でございます」
その中で物慣れたらしい半白の丈けの高いのが、一同に代わってのようにこう言った。「御苦労はこっちのことだぞ」そうその男の口の裏は言っているように彼には感じられた。不快な冷水を浴びた彼は改めて不快な微温湯を見舞われたのだ。それでも彼は能うかぎり小作人たちに対して心置きなく接していたいと願った。それは単にその場合のやり切れない気持ちから自分がのがれ出たかったからだ。小作人たちと自分とが、本当に人間らしい気持ちで互いに膝を交えることができようとは、夢にも彼は望み得なかったのだ。彼といえどもさすがにそれほど自己を偽瞞することはできなかった。
けれどもあまりといえばあんまりだった。小作人たちは、
「さあ、ずっとお寄りなさって。今日は晴れているためかめっきり冷えますから」
と早田が口添えするにもかかわらず、彼らはあてこすりのように暗い隅っこを離れなかった。彼は軽い捨て鉢な気分でその人たちにかまわず囲炉裡の横座にすわりこんだ。
内儀さんがランプを座敷に運んで行ったが、帰って来ると父からの言いつけを彼に伝えた。それは彼が小作人の一人一人を招いて、その口から監督に対する訴訟と、農場の規約に関する希望とを聞き取っておく役廻りで、昨夜寝る時に父が彼に命令した仕事だった。