Japanische Klassiker mit Furigana
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ひきょうもの
カインの末裔
有島 武郎
Lesen Sie カインの末裔 (ひきょうもの) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.876 Zeichen · 52 Bildschirme
理につまったのか、怒りに堪えなかったのか、父は押し黙ってしまった。禿げ上がった額の生え際まで充血して、手あたりしだいに巻煙草を摘み上げて囲炉裡の火に持ってゆくその手は激しく震えていた。彼は父がこれほど怒ったのを見たことがなかった。父は煙草をそこまで持ってゆくと、急に思いかえして、そのまま畳の上に投げ捨ててしまった。
ややしばらくしてから父はきわめて落ち着いた物腰でさとすように、
「それほど父に向かって理屈が言いたければ、立派に一人前の仕事をして、立派に一人前の生活ができたうえで言うがいい。何一つようし得ないで物を言ってみたところが、それは得手勝手というものだぞ……聞いていればお前はさっきから俺しのすることを嘘だ嘘だと言いののしっとるが、お前は本当のことを何処でしたことがあるかい。人と生まれた以上、こういう娑婆にいればいやでも嘘をせにゃならんのは人間の約束事なのだ。嘘の中でもできるだけ嘘をせんようにと心がけるのが徳というものなのだ。それともお前は俺しの眼の前に嘘をせんでいい世の中を作ってみせてくれるか。そしたら俺しもお前に未練なく兜を脱ぐがな」
父のこの言葉ははっしと彼の心の真唯中を割って過ぎた。