Japanische Klassiker mit Furigana
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カストリこうじつろく
カストリ侯実録
久生 十蘭
Lesen Sie カストリ侯実録 (カストリこうじつろく) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.619 Zeichen · 31 Bildschirme
した。
シモンは靴の底革を貼り合わせる締金付のマショアールという二枚板で先妻の子の頭をジワジワと締めつけ、のし餅のように平らにへし潰して殺したという評判があり、残忍のゆえに人に恐れられている男で、陰鬱な眼付をした、猫背の、顔色の悪い、いつも口元に冷笑を漂わせた、見るからに削げたような不快な人相をしていた。
七月三日、シモンは細君のマリイ・ジャンヌと一緒にル・タンプルの東塔の最上階へ移り、母后から太子をひき離しておのれの新居へ連れてくると、天鵞絨の服を剥ぎ、薄紗のシャツを剥ぎ、靴をぬがせて素足にさせ、泥の中をひきずりまわしたようなひどい襤褸を着せ、三角のフリージャン(革命の赤帽)をかぶせ、「さてお前は今日からおれ達を父上さま母上さまと呼ぶようにしろ。気をつけて口をきけよ。おれはお前の頭を壁にぶっつけて殺すことも出来るってことを忘れるな」と訓戒した。
満八歳になったばかりの太子は、なにひとつ心を慰めるものとてない古塔の廃室で、靴直しの夫婦の抜目のない監視の眼に見張られ、寝るにも起きるにもいちいち口汚く罵られながら、いつかまた母や姉に逢う日のあることを信じ、逆いもせずに耐えていた。