Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
カーライルはくぶつかん
カーライル博物館
Lesen Sie カーライル博物館 (カーライルはくぶつかん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.821 Zeichen · 14 Bildschirme
婆さんは黙然として余の背後に佇立している。
三階に上る。部屋の隅を見ると冷やかにカーライルの寝台が横わっている。青き戸帳が物静かに垂れて空しき臥床の裡は寂然として薄暗い。木は何の木か知らぬが細工はただ無器用で素朴であるというほかに何らの特色もない。その上に身を横えた人の身の上も思い合わさるる。傍らには彼が平生使用した風呂桶が九鼎のごとく尊げに置かれてある。
風呂桶とはいうもののバケツの大きいものに過ぎぬ。彼がこの大鍋の中で倫敦の煤を洗い落したかと思うとますますその人となりが偲ばるる。ふと首を上げると壁の上に彼が往生した時に取ったという漆喰製の面型がある。この顔だなと思う。この炬燵櫓ぐらいの高さの風呂に入ってこの質素な寝台の上に寝て四十年間やかましい小言を吐き続けに吐いた顔はこれだなと思う。婆さんの淀みなき口上が電話口で横浜の人の挨拶を聞くように聞える。
宜しければ上りましょうと婆さんがいう。余はすでに倫敦の塵と音を遥かの下界に残して五重の塔の天辺に独坐するような気分がしているのに耳の元で「上りましょう」という催促を受けたから、まだ上があるのかなと不思議に思った。