Japanische Klassiker mit Furigana
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キチガイじごく
キチガイ地獄
夢野 久作
Lesen Sie キチガイ地獄 (キチガイじごく) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.486 Zeichen · 46 Bildschirme
それから約一箇月ばかり経った、秋の初めのことでした。
骸骨のように痩せこけた身体に、ボロボロの登山服を纏うて、メチャメチャに壊れたカメラを首に引っかけた、乞食然たる男の姿が、ヒョッコリ旭川の町に現われて、何やら訳のわからない事を口走りながら、ウロウロし初めました。その男はヒドイ紫外線か、雪ヤケにかかったらしい、泥のような青黒い顔をしておりまして、そのボックリと凹んだ眼窩の奥から、白眼をギラギラと輝やかし、木の皮や、草の根の汁で染まった黄金色の歯をガツガツと鳴らしながら、川を渡るような足取で、ヒョロリヒョロリと往来を歩いているという、世にもモノスゴイ風付きでしたが、更にモットモット不思議な事には、その男の凹んだ眼の底に、裸体か、もしくは裸体に近い女の姿がチラリとでも映ると、それが絵であろうと、実物であろうと見境いは無い。破れ千切れた登山靴を宙に飛ばして、逃げ出して行くのでした。そうして知らない家でも、自働電話でも何でも構わない。行きなり放題に飛込んで、救けを求めるかと思うと、進行中の電車や汽車に飛び乗りかけて、跳ね飛ばされたりするので、トテモ剣呑で仕様がないのです。