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Japanische Klassiker mit Furigana

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キャラコさん

キャラコさん

久生 十蘭

Lesen Sie キャラコさん von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.236 Zeichen · 43 Bildschirme

Aozora Bunko

……疏水のほうから、木笛の音がゆるゆると流れてくる。

空耳ではなかった。佐伯氏がいつも吹く、あのやさしげな曲である。

キャラコさんは、なつかしさに耐えられなくなって、小走りしながら、蘆の間へ入ってゆくと、佐伯氏は木笛を吹いたまま、いつものように、すこし身をすさらせて、キャラコさんの席をつくった。

キャラコさんは、そのそばへ肱をくッつけて坐った。

佐伯氏は、もうあの黒い眼鏡をかけていなかった。どうしたのかと思われるほど、いきいきとした顔色をしていた。

楽しそうに、ゆっくりと木笛を吹き終えると、男にしてはすこしやさしすぎる、深く澄んだ眼差しでキャラコさんの顔を眺めながら、いった。

「キャラコさん、私はあなたに、ひどい嘘ばかりついていました。どうか、ゆるしてください。……私の弱さのせいもありますが、それはともかく、そうしなければならない深い事情があったのですから……」

キャラコさんは、黙ってうなずいた。

佐伯氏は、言葉を切ってから、ちょっと例のないほど率直な口調で、

「……キャラコさん、驚かないでくださいね。私は、昨年の暮れから世間を騒がせていた三万円の拐帯犯人なんです」