Japanische Klassiker mit Furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Lesen Sie キャラコさん von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.236 Zeichen · 43 Bildschirme
「君はどこか別な道から帰れないの。うるさいから、ついてこないでくれたまえ」
と、イライラした声で、投げつけるように叫んだ。
キャラコさんは、
「ええ」
と、素直にそう返事をして、しばらく立ちどまってから、ずっと離れて見え隠れに宿の入口まで送って行った。
宿へかえると、キャラコさんは、机に向って日記を書きはじめた。
キャラコの失敗
私は不幸なひとを見ると、すぐ感動してしまう。
きょう、私は夢中になりすぎて、不幸なひとをいら立たせた。
他人の不幸に感情だけで同感するということ。――ことに、衝動的な親切などは何の意味もなさない。私は、私の薄っぺらな同情を佐伯氏に見ぬかれてしまった。
それは、……
ここで、急にペンが動かなくなった。
キャラコさんは、にがにがしい顔をして長い間ペン軸を噛んでいたが、とうとう、思い切ったように、そのあとに、こんな風に書き足した。
つまり、私が、おっちょこちょいだから……。なってないわね。……よく覚えておきなさい。他人に同情するなどというのは、けっして容易いわざでないということを。いい加減な同情などは、これからつつしまなくては。
キャラコさんは、寝床へはいってから、いつまでも大きな眼をあいて天井をながめていた。