Japanische Klassiker mit Furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Lesen Sie キャラコさん von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 26.767 Zeichen · 54 Bildschirme
キャラコさんは頬に、サッと血の気がさす。いつになく、怒ったような声で、いった。
「お言葉ですけど、戦争は男だけがするものでしょうか。……戦場の兵士と同じような苦労を、女は、毎日じぶんの家庭でくりかえしています。……いつも、隠れて見えないところにいるけれども、その眼だたないところで、男性に協力して、びっくりするような大きな働きをしている『女の手』というものをどうぞ忘れないでちょうだい」
気がついて、困ったような顔をしながら、頬に手をあてた。
「あたし、……すこし、いいすぎましたわね」
四人のいちばんうしろにいた黒江氏が、低い声で、いった。
「かまいませんよ。どうぞ、どうぞ」
キャラコさんは、これで力をつけられてる。そのほうへちょっと感謝の微笑を送ってからまた続けた。
「……それから、情緒や女のやさしさなどというものを、なにか、役に立たない、つまらないものだというふうに考えるそういう考え方も、たいへん不服ですわ。……これは、聞きかじりですけど、欧洲戦争のとき、独逸の前線にも、聯合国側ほど豊富に女性の慰問の手紙や篤志看護婦がどんどん行っていたら、戦争の末期に、あんなひどい意気の阻喪の仕方はしなかったろうという事も聞いて知っています。