Japanische Klassiker mit Furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Lesen Sie キャラコさん von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 26.767 Zeichen · 54 Bildschirme
急に気が弱くなって、眼をしっとりとうるませていた。キャラコさんに、そばにいてもらいたいのらしかった。
山下氏が、いつになく懇願するような調子で、いった。
「医者を呼びに行くことはわれわれにだってできますが、介抱するほうはわたしどもではうまくゆきそうもないから、あなたは、どうか、ここにいて、こいつを見ていてください。……黒江にしたって、そのほうが心丈夫だろうし……」
キャラコさんは、素直にうなずいた。
「あなたが、そうおっしゃるんでしたら、そうしますわ」
カバード・コートを脱いで、袖をまくりあげると、酢酸をたらし込んだ冷たい水で、せっせと黒江氏の咽喉を湿布しはじめた。
「黒江さん、あなた、熱もないんですし、それに、そんなふうに、しっかりと眼をあいていられるでしょう。けして、たいしたことはありませんの、すぐ癒りますわ。災難なんて部類にもはいらないくらいよ」
キャラコさんの声の中には、ひとの心をなだめすかすような、明るい、しっかりした調子があって、それをきいていると、この世の中に、クヨクヨしたり、思いわずらったりするようなことは何ひとつないのだというようなのどかな気持になるのだった。