Japanische Klassiker mit Furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Lesen Sie キャラコさん von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 32.972 Zeichen · 66 Bildschirme
「ねえ、兄さん、あたしだって平和にやるほうが好きなんですよ。しかし、それにはそれだけのことをしてくださらなくては。……なにしろ、狭い船の中のことですからね。これは、けさもいいましたが、もういちど、ご注意までに申し上げときますよ」
エステル夫人とピエールさんが出て行くと、ベットオさんは、お前がいるから、それで、こんな騒ぎが起きるんだ、というような眼つきで、ジロリとキャラコさんの顔をながめてから、
「わしは、こんな騒ぎはまッぴらだ。……このへんでそろそろ退却しよう」
と、大きな声でいうと、不機嫌そうに肩をゆすりながら、酒場のほうへ行ってしまった。
一座の気分は、これですっかりしらけてしまった。アマンドさんだけは、てんで気にも止めていないらしい。新聞を下に置くと、ニコニコ笑いながら、眼鏡越しに一座をながめわたして、
「さあ、もう嵐はおさまった。かまわないから続けなさい。海の上の鴎というものは、いつまでも嵐のことなんぞ気にやんでいないものだ」
五
キャラコさんは、船室へ帰ると、すぐ寝床へはいったが、なかなか眠れない。
快遊船から降りさえすれば、レエヌさんと無意味な対立などをしなくともすむし、エステル夫人やベットオさんのうるさい気持の反射なども感じなくともすむ。