Japanische Klassiker mit Furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Lesen Sie キャラコさん von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 32.972 Zeichen · 66 Bildschirme
保羅が、門の前で大きな声で叫ぶと、すこし離れた別棟の小屋の戸があいて、提灯をさげた、六十ばかりの老爺がびっこをひきながら出て来て、ひどく大儀そうに門をあけた。漆にでもかぶれたらしく、顔いちめんを豆つぶのような腫物がおおっていた。
玄関へ入ると広い内椽で、そこからすぐ二階へあがれるようになっている。半開きになった右手は客間らしく、扉の隙間からそれらしい調度が見えていた。
仏蘭西瓦を置いた、木造のがっしりした建物だが、建ってからもう廿年以上にもなると見えて壁はところどころはげ落ち、どこもかしこも傷み、ひどいほこりだった。
保羅は、濡れた雨外套を着たままズンズン二階のほうへあがってゆく。キャラコさんは、濡れた靴を気にしながら、そのあとをついて行った。
保羅は、三つあるいちばん奥まった部屋の扉をそっとあけて、その内部へキャラコさんを押しいれた。
雨の汚点が、壁に異様な模様を描いている。化粧台の鏡には大きな亀裂がはいり、縁の欠けた白い陶器の洗面器の中に、死んだ蠅が一匹ころがっていた。
窓ガラスの上を、ひどい勢いで雨が流れおちる。とどろくような嵐の音。寝台の枕元の置電灯が、嵐がつのるたびに、あぶなっかしくスウッと暗くなる。