Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Lesen Sie キャラコさん von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.277 Zeichen · 21 Bildschirme
……弁当の包みを膝にのせながら、微妙な季節の移り変わりに驚歎している赤子のような無心な表情。……落葉のたまった水飲み台から一杯の水をくんで、それを飲むときの喜悦にかがやきわたるような顔。……稗か麦の貧しい握飯を、尊い玉ででもあるかのように両手で捧げ持っている敬虔なようすも、見るたびに、無垢な感動を、キャラコさんのこころのなかにひきおこす。
とりわけ、ベンチや、水飲み台や、まわりの草や花に、いちいち愛想よく別れの挨拶をする底知れない善良なようすを見ると、思わず、微笑んだり、ほろりとしたりする。
「なんといういいおじいさんなんだろう。いったい、どんな生活をしてきたひとなのかしら……」
じっさい、どういう紆曲を経て、このような調和のとれた忍辱の世界に到達したのであろう。こんな朴訥な、無心な老人が、まだこの世に生きているということすらが、すでに信じられないほどのことだった。
キャラコさんは、遠い憧憬に似た感情を心にかんじながら、こんなふうにつぶやく。
「いちど、あのおじいさんと、お話して見たいわ」
そのそばに坐って、季節のはなしや小鳥のはなしをするだけでも、なんともいえない楽しい気持になり、こころの隅々にまで清すがしい風が吹きこんでくるようなうれしい思いがするにちがいない。