Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Lesen Sie キャラコさん von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.277 Zeichen · 21 Bildschirme
と、いいきかせて、軽い跛をひきながら公園のなかへはいってくる。
やれやれというふうにベンチへ腰をおろすと、弁当の包みをたいせつそうに膝のうえへおいて、ニコニコと笑いながら、ひとわたりグルリと公園のなかを見まわす。
この小さな公園の樹も草も、花も、みな、この老人の親しい友達なのにちがいない。その証拠には、この老人は、ひとの眼に触れたこともないような、藪かげの一輪の花の消息にさえ、ちゃんと通じているのである。
たのしそうに、あちらこちらの繁みや藪かげをのぞき込みながら、
「花菅は、もう終りだ」
と、つぶやいたり、
「おや、唐胡麻は、きょうは元気ないの」
などといったりする。
花菅も、唐胡麻も、眼につくようなところにあるのではない。よほど注意して見なければわからないような、深い藪かげにあるのである。
たんのうするだけ花や草に挨拶すると、老人は水飲み台のほうへ立っていって、備え付けのアルミニュームのコップに、いっぱい水をくむ。それを口へもっていってすっかり飲みほすと、
「ああ!」
と、深い溜息をつきながら、空をあおぐ。
それは、このうえもない満足をあらわすしぐさなのだが、滑稽でもあり、あわれでもあった。