Japanische Klassiker mit Furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Lesen Sie キャラコさん von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.012 Zeichen · 48 Bildschirme
吸いとられるような眼つきで、薄氷の張った池の面をジッと見つめている。頬も唇もすき透るように蒼くなって、まるで蝋人形のようなようすをしていた。
キャラコさんは、なんともつかぬ深いため息をつく。
いいたい事はいろいろあるし、どうすれば慰めることができるかよく知っていたが、そんなことは、まるっきり必要がないように思われ出してきた。こうして黙ってそばに坐ってさえいれば、それで、充分心が通ずるのだと思った。
月が、西へ廻り、雪の上の影が、ゆっくりと池の水ぎわのほうへ移って行く。
永久とも思われるような長い時間だった。二人はひとことも口をきかずに、ひっそりと雪の上に坐っていた。
キャラコさんは、もう山小屋のことも、森川夫人のことも、芳衛さんたちのことも、なにひとつほかのことは考えていなかった。雪の冷たさも、夜の寒さも、まるっきり感じなかった。ただ梓さんが気の毒で、そのことだけでいっぱいだった。
(いま、どんな悲しい思いが梓さんのこころの中にあるのだろう。……でも、梓さんは、ひとりでいるのではない。こうして、あたしが、そばに坐っている……)
このことだけは、いくぶんでも梓さんを慰めるにちがいないと思った。