Japanische Klassiker mit Furigana
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ケーベルせんせい
ケーベル先生
Lesen Sie ケーベル先生 (ケーベルせんせい) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.238 Zeichen · 7 Bildschirme
私がもし日本を離れる事があるとすれば、永久に離れる。けっして二度とは帰って来ないと云われた。
先生はこういう風にそれほど故郷を慕う様子もなく、あながち日本を嫌う気色もなく、自分の性格とは容れにくいほどに矛盾な乱雑な空虚にして安っぽいいわゆる新時代の世態が、周囲の過渡層の底からしだいしだいに浮き上って、自分をその中心に陥落せしめねばやまぬ勢を得つつ進むのを、日ごと眼前に目撃しながら、それを別世界に起る風馬牛の現象のごとくよそに見て、極めて落ちついた十八年を吾邦で過ごされた。先生の生活はそっと煤煙の巷に棄てられた希臘の彫刻に血が通い出したようなものである。雑鬧の中に己れを動かしていかにも静かである。先生の踏む靴の底には敷石を噛む鋲の響がない。先生は紀元前の半島の人のごとくに、しなやかな革で作ったサンダルを穿いておとなしく電車の傍を歩るいている。
先生は昔し烏を飼っておられた。どこから来たか分らないのを餌をやって放し飼にしたのである。先生と烏とは妙な因縁に聞える。この二つを頭の中で結びつけると一種の気持が起る。先生が大学の図書館で書架の中からポーの全集を引きおろしたのを見たのは昔の事である。