Japanische Klassiker mit Furigana
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ココナットのみ
ココナットの実
夢野 久作
Lesen Sie ココナットの実 (ココナットのみ) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.448 Zeichen · 35 Bildschirme
しかし、きょうは許してやる。俺の可愛い奴のために見のがしてやる。ここで出会ったんだから仕方があるまい」
「………………」
「行け…………」
ブル・オヤジが、こう云うのと一緒に、ウルフの両手を掴んでいた運転手が手を離して、グルリと相手の横ワキへまわった。その菜っ葉服のポケットの中でピストルを構えているのが真上から見ているせいか、よくわかった。
けれどもウルフは行かなかった。その代りに今まで猫背に屈まっていた身体をシャンと伸ばすと、共産党員らしい勇敢な態度にかわって、ブル・オヤジの真正面にスックリと突立った。二人はそのまま睨み合いをはじめた……。
妾は何だかつまんなくなって来た。
睨み合っている二人はお互いに、お互い同志の事を知り過ぎるくらい知り合っているのだった。それでいてこの妾に気兼ねをしているために、何んにも手出しが出来ずにいるのだった。
妾は窓から首を引っこめて、大きなクシャミを一つした。寝台の下に手を入れて、コロコロ倒れる瓶の間から、重たいパンの固まりを取り上げると、その横腹をやぶきながら、もう一度窓の下をのぞいてみた。
五階の下の往来では二人がまだ睨み合っている。