Japanische Klassiker mit Furigana
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ズラかったしんきち
ズラかった信吉
宮本 百合子
Lesen Sie ズラかった信吉 (ズラかったしんきち) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 54.656 Zeichen · 110 Bildschirme
……わかるか? 俺の云うこと」
「わかる!」
誰かが言下に答えた。
「わかるよ」
わきへよってそれ等の問答をききながら鞣前垂が紙巻き煙草をこさえていたが、真面目などっか心配そうな眉つきになって信吉にきいた。
「お前、ソヴェトが今どういう時だか知ってるか?……五ヵ年計画って何だか知ってるか?」
「知ってる……よくは知らないが、知ってる」
「ふむ、そりゃいい。今何より大事なことなんだ、われわれんところじゃな。いいこともわるいこともみんなそっから来てる」
……こいつ、党員かしら。――信吉は鞣前垂にきいた。
「お前、党員かい?」
「そうじゃない」
手巻きタバコをくわえ、それにマッチをつけながら、
「党員の方がよかったか? ハッハッハ」
いかにも、こだわりない声で笑った。みんな笑った。
「党員だけがいい労働者にゃ限らねえ」
すると、わきの若い一人が、親指でその鞣前垂の広い胸をつっつきながら、
「これは、一九一七年の英雄だよ。この工場が『白』に占領されそうんなったとき、こいつは涙ポタポタこぼしながら樽のかげからつづけざまに『白』の〔十字伏字〕」
鞣前垂のゆったりした全身にはどっか際だって心持のいいとこがあった。