Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
ズラかったしんきち
ズラかった信吉
宮本 百合子
Lesen Sie ズラかった信吉 (ズラかったしんきち) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 54.656 Zeichen · 110 Bildschirme
「グーロフだ」
「……似てるわ」
クラブを出て、花壇を歩きながら、オーリャが、
「お前、家族ないんだろ?」
と云った。
「ない」
「私知ってるよ、今、お前自分で自分に満足してやしないんだ」
「…………」
そりゃ本当だ。
カンナの花のわきで、オーリャがぴたりと立ちどまった。
「お前、お書き。……そうすりゃすっかりよくなるよ。……書くだろう?」
太陽はキラキラ照りつけて、工場の三本の煙突も、カンナの大きい花も、オーリャのすらりとした素脚も、青空といっしょに燃えるようだ。
「書く?」
「うん!」
「そうしなくっちゃいけないさ。〔十三字伏字〕、〔四字伏字〕区別なんぞないんだ。そうだろ?」
「俺は……」
「わかってるよ。ブルジュアの魔法さ」
オーリャは、信吉の顔の前で、艶々した唇をトンがらかして呪文をとなえる真似をした。そして笑い出した。
「さ、握手しよう!」
信吉はしっかり、細い、だが力のあるオーリャの手を握った。
「さきへ行って、食堂んとこで待っといで。いい? 私、コーリャよんで来てやるから。あの子、がっかりしてたよ、さっきは――」
信吉は、元気に手をふって花壇を足早に工場学校の方へ行くオーリャの後姿を長いこと立って見送ってから、食堂へ行った。