Japanische Klassiker mit Furigana
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きなだむら
ゼーロン・淡雪 他十一篇
牧野 信一
Lesen Sie ゼーロン・淡雪 他十一篇 (きなだむら) von 牧野 信一 (まきのしんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.321 Zeichen · 54 Bildschirme
であったから、係員である僕たちは部屋に戻ると縄梯子を捲きあげておかなければならなかった。また荷物を携えている来訪者は、係員にエレベーターの下降を乞うのであった。
滑車に綱を垂らし、綱に木製の箱を結び、これを釣籠仕掛で、部屋の中から人力で捲きあげるエレベーターである。人力ではあるが、捲き上げの部所には大小二個の歯車がつけられ、大輪のハンドルを把って捲きあげる具合になっていて、あたかも自転車の理に似て、機械は与えられたる動力の幾倍かの仕事能率を現すわけだったから、仮令酔漢であろうともこのエレベーター係りは容易く果されるわけだった。
「おひとり?」
「いいえ、大勢――マメイドさんも一緒よ、そこで出遇ったの。」
そこで僕は、七郎丸に代って通話口を覗き込んで唸った。
「どんな意味であろうとも僕らに反感や不快を抱いている者があったら、今夜だけは失敬する。」
「お神楽の稽古の邪魔になって?……遠くから皆な見えたわよ。」
「どうしようか?」
と僕は七郎丸に計った。
「見られたら見られたで、決して臆するところはないよ。――降そう。」
鍵を外すと、ゆるやかな音をたててエレベーター・ボックスが静かに降りて行った。