Japanische Klassiker mit Furigana
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ドグラ・マグラ
ドグラ・マグラ
夢野 久作
Lesen Sie ドグラ・マグラ von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 424.847 Zeichen · 824 Bildschirme
その儀十という男は、生れ付き左利きで御座いましたが、仲々の体力と精力の持主で、自分一代のうちに鍬一本で、大身代を作り上げて、御領主黒田の殿様から鉢巻という苗字と、帯刀を許されたという立志伝中の人物だそうで御座います。
ところで又、何が故にそのような奇妙な苗字を頂戴に及んだかと尋ねますると、この鉢巻と申しまするのは元来、この男の若い時分の綽名で御座いました。つまり汗を拭う時間が惜しいというので、田畠の仕事を致します時には、いつも眉の上の処に、手拭で後鉢巻を致しておりましたところから来た綽名だというので御座いますから、如何にその働らき振りが猛烈であったかが、おわかりになるでしょう。夜が明けてから暮れる迄の間に休むのはタッタ一度だけ……福岡、舞鶴城の天守の櫓で、午の刻……只今の正午のお太鼓がド――ンと聞えますと、すぐに鍬を放り出して、近くの堤か草原の木蔭か軒下に行って弁当を使う。それから約半刻……と申しますと只今の一時間で御座いますな。その間、午睡をしてから、ムックリ眼を醒ましますと又、日が落ちて、手元が見えなくなるまで休まないというのですから豪気なもので……多分この男も一種の偏執性性格といったような素質を持った人間で御座いましたろうか。