Japanische Klassiker mit Furigana
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ノンシャランどうちゅうき
ノンシャラン道中記
久生 十蘭
Lesen Sie ノンシャラン道中記 (ノンシャランどうちゅうき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.878 Zeichen · 26 Bildschirme
驚破、このへんでいよいよ仏独戦争が始まったのに違いない。地球の向う側から、はるばる欧羅巴くんだりまでやって来て、流れ弾に当って討ち死にするのはいかにも残念。ともかくまず逃げるに限ると、期せずして二人が手を取り合って、闇雲に駆け出そうとすると、土堤の右手の壕のようなところから、鉄甲をかぶった水色羅紗の兵士が一人携帯電話機の受話器だけを持って跳り出し、大喝一声、
「止れ!」と、縮みあがるような凄味のある声でどなりつけた。たちまちセエヴル焼の人形のようにこわばってしまった二人の前へ駆け寄って来た兵士、今度は何を立腹したのか、いきなり、
「馬鹿野郎!」と我鳴った。「どこへ行くか」
「あの、ニースまで行くんですけれど」
「なぜこんな処を通行するか」
「あら、いけないの」
そこで兵士は、迂散くさそうにじろじろ見すえてから、
「君達の国籍はどこか」
「大日本帝国」
「旅行券!」
コン吉が恐る恐る差し出した旅券の写真と二人の顔をまたじろじろ見くらべてから、
「写真機を持ってるか」
「ええ、あってよ」と、タヌはそろそろ中腹な声を出し始める。
「この辺で撮影したか?」
「そんな暇なかったよ」