Japanische Klassiker mit Furigana
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ノンシャランどうちゅうき
ノンシャラン道中記
久生 十蘭
Lesen Sie ノンシャラン道中記 (ノンシャランどうちゅうき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.357 Zeichen · 27 Bildschirme
「患ってるんじゃねえ、卵を孵してる。象の卵を孵してる」
「これはしたり、ちょっくら見せてもらえるかねえ」
「とんでもねえ、風邪をひかせる」
「じゃあ、触るだけならよかろ」
「うむ。……じゃ、床のなかへ手を入れて見るがいい。そっとだぞ。そっとだぞ」
赤土焼屋は床のなかへ手を差し入れた。
「象の卵?……おっと、触った、触った。……南無三、こりゃどうじゃ、もう孵っているに! 俺ぁいまたしかに象の鼻に触った!」
と、いったが、元来、ココアの実から象の生れるわけはない。またしてもマルセーユ人に一杯喰ったのに違いない。ああ、用心するがよろしい。法螺吹き、いかさまの、ペテン師の、この乾物屋の主人のような奴ばかりうようよしている、これがマルセーユだ!
二、憐れなるかな網焼肉の命乞い。さて、コン吉ならびにタヌキ嬢の両氏が、コルシカはタラノの谿谷で宏大無辺なる自然を友とし、唱歌を歌いつつ日を過すうち、はや、一ヵ月は夢の間に過ぎ、モンテ・カルロで受けた心の傷もようやく癒えたので、面構えに似気なく心の優しい部落の面々に別れを告げ、固く再来を約し、勇ましいタラノ音頭に送られて谷を出発したのは六月の始め。