Japanische Klassiker mit Furigana
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ノンシャランどうちゅうき
ノンシャラン道中記
久生 十蘭
Lesen Sie ノンシャラン道中記 (ノンシャランどうちゅうき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.137 Zeichen · 26 Bildschirme
は一人残らず下車し、あとには泰然と眠るタヌと自分のただ二人、日ごろ小胆なるコン吉は、なんということなく心細くなって、
「モシ、モシ」と、タヌをゆすり起こすと、タヌは、寝ぼけがちなる眼瞼をしばたたきながら、
「あら、また巴里なの」と、神秘的なことをいう。
「いや、ここはマルセーユです。しかしね、あまり寝ると今度は、伊太利の方へ行ってしまうから、ここらで目を覚ましてはどうですか、それにしても夜がふけたとみえて、だいぶ冷えて来たから燃料補給のため、僕はこれから駅食堂へ行ってサンドイッチでも買って来るつもりです。――そちらに何かご注文がありますか」
「熱いショコラを一杯買って来たまえ」
「ショコラを一杯。――もし熱くなかったらどうしますか?」
「機関車へ行って暖めていらっしゃい」
「はい、かしこまりました」と、コン吉が、扉を開けて廊下へ出ようとすると、その一尺ほどの扉の隙間から、凩のようにひょろりと吹き込んで来た一着の銀鼠色のモオニング。――黒琥珀の袋に入れた長い折り畳み式釣竿のごときものを小脇にかかえ、大きな自動車用の塵除け眼鏡をかけ、真紅の靴下にズックの西班牙靴をはいた異装の人物。