Japanische Klassiker mit Furigana
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プウルのかたわらで
プウルの傍で
Lesen Sie プウルの傍で (プウルのかたわらで) von Nakajima Atsushi (中島 敦) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.843 Zeichen · 34 Bildschirme
帰れば、毎晩帰りのおそい彼に対して、絶望的に悲しげな父の顔と、おずおずと困ったような継母の顔が待っているばかりであった。父はもう彼を打たなくなった。それだけ、その父の悲しげな顔を見るのが、彼には厭であった。彼は出来ることなら、何時迄も歩いていたかった。路は大通りのはずれから坂になって、のぼって行った。それが、どのような場所へ導く道であるかを、彼も友達もぼんやり知っていた。三造は、ふと立止って友達の顔を見た。友達も彼を見かえした。二人は何のこともなく微笑した。瞬間、彼等の眼附の中に、疑惧と躊躇と好奇心とが入交ってあらわれた。次の瞬間に二人はもう一度微笑をかわすと、黙って、また坂を上りはじめた。浴衣がけの、その友達は、顔の吹出物を気にしながら。まだ制服のままの三造は、ポケットに朱色の小型のウェルテル叢書をしのばせながら。その本は「ポオルとヴィルジニイ」であった。
そういう街がその方面にあることは知っていたけれど、そこへ足を入れるのは、彼等にとって初めてであった。アカシヤの並木の続いた暗い坂を登りつくすと、もうそこには、そのような店が明るくならんでいた。