Japanische Klassiker mit Furigana
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プウルのかたわらで
プウルの傍で
Lesen Sie プウルの傍で (プウルのかたわらで) von Nakajima Atsushi (中島 敦) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.843 Zeichen · 34 Bildschirme
床にはずっと渋色の油紙が敷かれていた。中庭に向って、四角な小さい窓が開いていて、障子の代りに青い簾が下っていた。部屋の中には何の飾りもなかった。隅っこに夜具が積まれ、その側に、朱い塗のはげた鏡台があった。黄と赤と緑の、けばけばしい色の、それだけは新しい、鏡掛けが、それにかかっていた。それはいかにも朝鮮人らしい好みであった。その鏡の横に、前髪を垂らした日本の子供の人形が立てかけられていた。それが此の部屋のたった一つの飾りであった。少女は彼を連れて部屋にはいると、堅い床の上にペタリととんび足に坐って、鏡をのぞいて紅を脣にさした。それから後を向いて、立っている三造にむかって「坐れ」というような手真似をしながら朝鮮語で何か言った。坐ろうにも、堅い土の温突の上に座蒲団もなかった。彼は仕方なしに、床と同じように渋紙を張った壁にもたれて、しゃがんだ。彼は最初に「オルマヨ(いくらだ)。」と聞いた。それは彼の知っている少数の朝鮮語の中の一つであった。「イクラ、カマワナイ。」と逆に少女が日本語で答えた。それから、しばらく考えて、また、「ヤスイヨ。」とつけ加えた。弱々しそうな身体つきと顔立をした少女が、やさしい表情をしながら、変な日本語を使うのが、彼に妙な気持をさせた。