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Japanische Klassiker mit Furigana

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ヘヤーピンいっぽん

ヘヤーピン一本

豊島 与志雄

Lesen Sie ヘヤーピン一本 (ヘヤーピンいっぽん) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.246 Zeichen · 17 Bildschirme

Aozora Bunko

娘は食事をすました。俺はまだ飲んでいた。

「いろいろ、お世話になりました。」と娘ははっきり挨拶をした。

俺は名刺の裏に、岩木周作の住所氏名を書いて渡した。

「伯母さんのこと、近所の人に開いて分らなかったら、市役所に行って調べてもらえば、分るかも知れませんよ。それから、これは僕の友人で、僕もこれからそこへ行くんですが、市役所とも関係が深いから、何かの場合には便宜が得られるかも知れません。」

それが、つまり、鮭缶に対する俺の礼心だったのだ。俺は少し酔いかけていた。人間は酔ってくると、なんと善良に親切になることぞ。

娘は先に出かけて行った。宿屋の中はもうひっそりして、空家みたいになっている。

俺も、残りの酒を飲み干すと、ちょっと寝ころんで、それから出かけることにした。持ち古したシガレット・パイプと、ヘヤーピン一本とで、すっかり落着くことの出来たなつかしいカツギヤ宿だ。

ところが、女中に勘定をたのむ時、酔いかけてる善良な親切な俺が、恥しいことを言った。

「あの娘さん、勘定は払ったかね。」

「払って行ったよ。」

女中は答えて、怪訝そうに俺の顔をじっと見た。

俺は恥しくて、顔が赤くなる思いをした。