Japanische Klassiker mit Furigana
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ヘヤーピンいっぽん
ヘヤーピン一本
豊島 与志雄
Lesen Sie ヘヤーピン一本 (ヘヤーピンいっぽん) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.246 Zeichen · 17 Bildschirme
布団を耳のあたりまでかぶって、向うむきに、すやすや眠っているらしい。俺の感じからすれば、あの帳場でも、またこの室でも、俺と殆んど同様に早く眠りこんだ。而も、見ず識らずの四十男の俺のすぐそばで。図々しいのであろうか。信頼しきってるのであろうか。よくは見なかったが、まだ二十歳前の年頃のようで、銘仙らしい着物やモンペは、縞柄はじみだが清楚な感じで、人造革の小型なボストンバッグを一つさげていた。
人に警戒心を起させるような何物もないので、却って逆に、ふっと、俺の心に警戒の念が湧いた。こんな娘にこそ油断はならないのだ。そう思うことがまた、一方では恥しく、むりにそれを克服しようとした。そして俺は上衣をぬぎすて、洗面具を持って、廊下に出た。
廊下には、あちこちに男女の姿が見えた。男はジャンパーもしくはジャケツにズボン、女はスエータにズボンもしくはモンペの、体躯逞ましい若者が多い。一見してそれと分るカツギヤたちだ。――その宿屋は、カツギヤ専門のものだった。外の街路の、夜半すぎの明るさや賑かさも、彼等専門のものだったであろうか。
廊下のつき当りに、広い板の間があって、洗面所となっている。