Japanische Klassiker mit Furigana
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ボニンとうものがたり
ボニン島物語
久生 十蘭
Lesen Sie ボニン島物語 (ボニンとうものがたり) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.772 Zeichen · 41 Bildschirme
「どうするといって、おれに、なにができる。われら一族の業の深さには、おれもほとほと驚きいっている。そのせいで、生きていることも面白くなくなった。貧乏とのやりあいも、もうこの辺でやめにしたい。言いたいこともあるだろうが、笑って、腹を切らしてくれい」
深志がうなずいた。
「おれはなにも言わぬよ。それぞれの存念によることだ。したいようにするがよかろう」
「ありがたい。話も酒も尽きたそうな。では、そろそろ、やるか」
久太夫は貧乏徳利をとって床に打ちつけた。いいほどのカケラを拾いだすと、それを手に持って行灯のそばへ行き、つくづくという風にながめていた。
田中久太夫がいわれもなく自裁したあと、久太夫の役が、七尾駒三郎と深志にまわってきた。江戸の家老の毛馬内典膳は、二人を御用の間へ呼んで「如才もあるまいが、然るべく」といった。
江戸を発ったのが、天保九年の四月三日。本土の果てなる大湊までは、途中を急いで十五日の旅である。杉戸、小金井、喜連川と泊りをかさね、四月十六日の午後、北郡の七戸に着いた。
七戸から北は、砂丘まじりの地表が茫漠とひろがり、屋根に石を載せた暗ぼったい家が、二里に三軒、三里に二軒というぐあいにバラ撒かれ、そのむこうに錆色の荒くれた海が見える。